概要

IIeカードはAppleがもともとMacintosh LC上でApple IIeのソフトを走らせために開発したPDSカードです。Macintosh LCはAppleが初めて出した普及型のカラーMacで、小中学校をターゲットに売り込みが図られました。ただ当時アメリカの小中学校ではApple IIがまだ絶大な普及率を誇っており、AppleII用ソフトウェアへの投資を無駄にすることなく、AppleIIからMacへのプラットフォーム移行を促進するという使命を持って生まれたのがこのIIeカードです。1991年の3月から販売が開始され、そのときの価格は$199でした。

YケーブルとIIeカード
製品にはIIeカード本体とYケーブルが含まれていますが、中古品の場合、カード単体で売られていることも多い様です。YケーブルはIIeカードに差してジョイスティックや外付けフロッピードライブを接続するためのものです。IIeカードではMac自体のフロッピーディスクをIIeのディスクとして使えるため、3.5インチソフトでジョイスティックを必要としないソフトであれば、Yケーブルなしでも問題ありません。

Appleの純正だけあって互換性は高く、ほとんどのApple II用ソフトを走らせることができます。今では程度の良いApple IIeを探すのは困難になりつつあります。むしろColor ClassicにIIeカードを入れて使うというのはどうでしょうか?非常にコンパクトで可愛いApple IIe/Macintoshデュアルシステムが出来上がります。

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スペック

■主なハードウェア仕様は以下の通りです。

CPU: 65C02
クロック速度: 1.02MHz/1.9MHz
アドレスバス: 16 bits
アドレスレンジ: 2バンク(各バンクが65,536バイトでトータル128Kバイト)

グラフィック表示

  • ローレゾ(16色):40x48
  • ハイレゾ(6色):280x192
  • ダブル・ハイレゾ(16色):140x192
  • ダブル・ハイレゾ(モノクロ):560x192

■オリジナルのApple IIeとは大体以下のような違いがあります。

    1. プロセッサとしては後期のIIeと同様65C02が使われています。クロックスピードはIIeの1.02MHzに対して1.9MHzと約2倍の速度で動作します(ただこれだとゲームが速く動きすぎるので、ソフトウェアで速度の切り替えができるようになっています)。

    2. 次のハードウェアがすでにビルトインされた形になっています:
      • RAMカード
      • スーパーシリアルカード(2枚)
      • プリンターカード
      • SmartPortカード
      • AppleTalkカード
      • マウスカード
      • Extended 80-columnカード

    3. Mac本体のハードディスクの一部をIIeのハードディスクとして使える、Mac本体のADBマウスをIIeのマウスとして使えるといったオリジナルのIIeにはない優れた点もあります。
      オリジナルのIIeでハードディスクを使うにはSCSIカードが必要ですが、今日では入手は非常に困難で、しかも高価です(SCSIカードを使わない内蔵型ドライブもありますが、これはもっと入手が困難です)。その点IIeカードには元々そうした機能が備わっており、特別なハードやソフトを追加することなくMacのハードディスクの一部をIIe用として使うことができます。

    4. 使える周辺機器に制限があります(周辺機器のセクションを参照してください)。

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必要システム

もともとMacintosh LCのために設計されましたが、LCII、LCIII、LC475など、後続のLCシリーズでも動作します。一般的に言ってLCスロットを持ち、24ビットアドレッシングモードでOSを走らせることができる機種ならIIeカードが動作します。アップルのKnowledge Databaseによれば、IIeカードの動作する機種は以下のとおりです。

LC, LC II, LC III, LC 475, LC520、LC 575, LC 550, Performa 400, 405, 430, 450, 475, 476, 550, 560, 575, Quadra 605, Color Classic

その他、Color Classic II でも動作するようです。

LC575とPerforma575については、通信スロットにモデムやネットワークカードが挿さっているとIIeカードが認識されないとアップルのKnowledge Databaseにありますが、問題なく動作するという報告もあります。

必要なOSのバージョンは7.5.5以下です。システム6.0.7でも動作します。7.6以上では24ビットアドレッシングモードの問題で動作しません。

24ビットアドレッシングモードについて:

もしあなたのOSのバージョンが7.5.5以下なら、コントロールパネルのメモリーを開けてみてください。32ビットアドレッシングモードをオン/オフするオプションがあれば、オフを選ぶことでOSは24ビットアドレッシングモードになります。

7.6以降のOSではこのオプションがなく、常に32ビットアドレッシングモードで動作します。したがってIIeカードは動作しません。7.5.5以前のOSなのにこのオプションがなければ、そのMacはもともと32ビットアドレッシングでしか走らないように設計されています。したがってそうしたMac(LC630シリーズなど)では、たとえLCスロットがあってもIIeカードは動作しません。

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インストール

LC475にIIeカードを取り付けているところ。LCスロットに挿入するだけです。

Apple IIeカードはAppleの製品だけあってインストールは簡単です。Macintoshを一通り使いこなせる人なら、Apple IIの経験がなくても多分15〜30分くらいでIIeカードをインストールして、ソフトを走らせることが可能だと思います。

ただ日本未発売のため、残念ながら日本語の取り扱い説明書はありません。英語の取り扱い説明書は今もAppleのサイトからダウンロードすることができますが、150ページもあり、決して分かりやすいとは言えません。クイックスタートガイドみたいなものがあるといいのですが。

初めてインストールする場合はハードディスク上にProDOSパーティションを作るところから始めずに、まずIIeをフロッピーベースで動作させる環境を作ることをお勧めします。

フロッピーベースでIIeカードを動作させるための インストールの詳細についてはこちらをご覧ください。またMacのハードディスク上にProDOSパーティションを作ってIIeカードをハードディスクベースで動作させるためのインストールの詳細についてはこちら(PDFドキュメントです)をご覧ください。

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周辺機器

IIeカードでは以下のような周辺機器が利用できます。

  • 5.25インチフロッピードライブ

Yケーブルで外付けの5.25インチフロッピードライブを2台まで接続できます。互換性の問題があるので、もし購入するならアップル純正のものをお勧めします。ただApple純正のドライブであれば全てIIeカードで動くかというとそうではないので、注意が必要です。

IIeカードで動くのはApple 5.25 Inch Diskだけで、UniDisk、DuoDisk、Disk IIなどは動作しません。特に5.25 Inch DiskとUniDiskは形がそっくりなので購入の時は注意してください。前者はプラチナ色、後者はベージュ色なので見分けがつきます。ドライブ裏面の製品名プレートを見れば確実です。

上の写真は左からApple 5.25 Inch DiskとUniDisk、Disk II、DuoDiskの各フロッピードライブ。Apple 5.25inch DiskとUniDiskは同じ形をしていますが、色が異なります。

  • 3.5インチフロッピードライブ

Yケーブルで3.5インチフロッピードライブを1台接続できます(Macの内蔵フロッピーと合わせて、合計2台)が、IIeカードで動作する3.5インチフロッピードライブはAppleのUniDisk(白色のもの)だけです。プラチナ色のドライブは形が似ていますが使用できません。3.5インチのUniDiskは入手が困難なので、どうしても2台欲しいという人はオリジナルのLCを使うのが良いかもしれません。LCは3.5インチフロッピードライブを2台内蔵できるので、それぞれIIeのドライブとして使えます。ただしその場合、ハードディスクは外付けしなければなりません。

  • ジョイスティック

DB9ピンのものがYケーブルで接続できます。

(備考)説明書にはジョイスティックやドライブをYケーブルに接続したり切り離したりするときはMac本体の電源を切ってから行うように書いてあります。こういう注意は往々にして無視しても問題ないのですが、私はこれをやってジョイスティックを2台壊してしまいました。ジョイスティックの接続にはご注意ください。

  • マウス

Mac本体のマウスが使えます。

  • プリンター

Apple ImageWriter、LaserWriterなどが使えます。

  • その他

IIeの拡張スロットに取り付けるタイプの機器はもちろん物理的に不可能です。モデムなどのシリアル機器はMac本体のシリアルポートを通して接続できます。

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ソフトウェア

Apple IIのソフトを入手するのは難しくなってしまいました。さすがにアメリカのショップでもApple IIのソフトを置いているところはもうありません。オンラインショップではまだApple IIのソフトを扱っているところがありますが、ソフトの入手はやはりオークションサイトでということになります。掘り出し物を探すのがApple IIの楽しみの一つではないでしょうか。

またマニュアルやパッケージは要らないというのなら、ダウンロードという手もあります。インターネット上にはApple IIのゲームをダウンロードできるサイトが数多くあり、往年の人気ゲームも無料で楽しむことができます。有名なのはAsimovのftpサイト(ftp://ftp.apple.asimov.net/pub/apple_II/images/)、Groundのftpサイト(ftp://ground.ecn.uiowa.edu/apple2/)などです。

ただダウンロードしたファイルはディスクイメージなので、実際に立ち上がるようにするにはフロッピーにもどしてやらなければなりません。詳細についてはHOW TO DOWNLOADのコーナーをご覧ください。

Apple IIのソフトはほとんど全て英語です。日本語のソフトもごく僅かですがありました。事実私がApple IIcを買ったときは(当時はキャノンが販売していました)単漢字変換でしたが日本語ワープロが付録として付いて来ました。その他に日本語のアドベンチャーゲームも付いていたような記憶があります。

■IIeカードで動くソフト

IIeで動くソフトであれば、IIeカードでもほとんど動作します。II、II+、IIcで動作するソフトは基本的にIIeでも動作しますから、IIgs用以外のApple II用ソフトは大体IIeカードで動くと考えていいと思います。APPLEによれば、コピープロテクトがかかったソフトの一部には動作しないものがあるそうです。

AppleはIIeカードで操作するソフトの一覧を提供しています。こちらです。

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フロッピーについて

Apple II用のフロッピーには5.25インチと3.5インチの2種類がありますが、5.25インチは1DD、3.5インチは2DDのものが使用できます。

■3.5インチフロッピー

2DDの3.5インチフロッピーは入手が難しくなりました。今日売っている新品のフロッピーは例外なく2HDです。Macの内蔵フロッピーは2HDのフロッピーが読めますが、Apple IIeエミュレータでは2HDは使えません。もしどうしても2DDが手に入らないときは2HDの四角い孔をテープなどで塞げば2DDとしてフォーマットすることができます。

■5.25インチフロッピー

Apple IIで使えるのは1DDのものです。ところで、5.25インチフロッピーを見たことがないという人が増えつつあるようです。8インチフロッピーとなると、そんなものがあったことさえ知らないという.....

2DDのものも使えます。その場合、片面しか使用しないため裏返せばもう一枚のフロッピーとして使えます(3.5インチフロッピーではこんな芸当はできませんね)。ただそうするとライトエネーブルノッチの位置が左右逆になってしまうので、ノッチの切り込みを開けてやらなければなりません。昔はこのノッチを開けるためのノッチパンチャーというのが有りました。今では手に入らないでしょうから、カッターナイフで慎重に切り込みを作ってください。これで貴重な5.25インチフロッピーを2枚に使えます。

■フロッピーのコピー

5.25インチフロッピーは手に入り難いし取り扱いも不便なので、3.5インチディスクにコピーして使いたいと誰しも思うでしょう。2種類のフロッピーは容量が違うのでフロッピーの複製を取ることはできません。中のファイルをそれぞれコピーすることはもちろんできます。

プログラムディスクをこのように5.25インチから3.5インチにコピーした場合、ちゃんと動作するのかと言う問題があります。コピープロテクトの掛かっているプログラムは問題外ですが、コピープロテクトが掛かっていない場合は動作するときと、しないときがあります。

Apple IIのOSにはDOS3.3、ProDOS、Pascal DOSがあります(Pascal DOSはあまりポピュラーではありません)。DOS3.3は5.25インチフロッピーしかサポートしていないので、DOS3.3ベースのソフトを3.5インチフロッピーにコピーしても原則として動作しません(動作することもあります)。一方ProDOSベースのソフトは3.5インチフロッピーやハードディスクにコピーしても、ちゃんと立ち上がります。

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購入ガイド

■IIeカード

もちろんIIeカードはもう既に生産は中止されています。それに残念なことに日本では発売されませんでした。これはアメリカで小中学校向けのマーケティングの必要性から生まれたという事情と関係があります。いずれにしても、日本ではApple IIはほとんど普及しなかったので、それもしかたがないでしょう。

ともかく以上のような理由から、IIeカードは日本ではレアな製品で入手は困難です。オークションサイトやマックの中古ショップなどで買えるかもしれませんので、探してみてください。

■フロッピードライブ

本格的にApple IIの世界を楽しむためには5.25インチドライブが必要になってきます。購入するならApple純正のものをお勧めします(詳細は周辺機器のセクションを参照してください)。

日本ではもう見つけるのが難しいかもしれませんが、アメリカではまだ比較的容易に入手できます。最近のフロッピードライブと違って、当時のフロッピードライブは不思議なくらい重いです(4ポンド以上もある)。アメリカの通販で買うと商品の価格より送料の方が高くなってしまいます。

■Yケーブル

フロッピードライブとジョイスティックの接続にはYケーブルが必要です。単なるケーブルですが意外に入手が難しいです。器用な人なら自作できるかもしれません。

■ジョイスティック

ジョイスティックは有った方がいいですが、ほとんどのゲームではキーボードで代用できるようになっているので、必須ではありません。いろいろなメーカのものがありますが、やっぱりAPPLE純正品のシンプルなデザインは秀逸だと思います。

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